今回は建設工事の請負契約に関し、説明させていただきます。
■建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して、請負代金の額等、法定の16項目を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。(法第19条第1項)
・それらの項目に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付(同第2項)
・契約の相手方の承諾が得られれば、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用することも可能(同第3項)
・契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として着工前に実施(建設業法令遵守ガイドライン:国土交通省)
なお、書面による契約は、「元請負・下請負の別」及び「請負⾦額の大⼩」に係わらず、全ての建設工事請負契約について義務づけられています。
■また、工事ごとの個別契約以外にも、以下の形態が認められています。
ア 当事者間で基本契約書を取り交わした上で、具体の取引については注文書及び請書の交換による場合
① 基本契約書には、法第19条第1項第5号から第15号に掲げる事項(注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付すること
② 注文書及び請書には、法第19条第1項第1号から第4号までに掲げる事項その他必要な事項を記載すること
③ 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことが明記されていること
④ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること
イ 注文書及び請書の交換のみによる場合
① 注文書及び請書のそれぞれに、同一の内容の契約約款を添付又は印刷すること
② 契約約款には、建設業法第19条第1項第5号から第15号に掲げる事項(注文書及び請書に個別に記載される事項を除く。)を記載すること
③ 注文書又は請書と契約約款が複数枚に及ぶ場合には、割印を押すこと
④ 注文書及び請書の個別的記載欄には、建設業法第19条第1項第1号から第4号までに掲げる事項(上記(2)の①から④までの事項)その他必要な事項を記載すること
⑤ 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別的記載欄に記載されている事項以外の事項については契約約款の定めによるべきことが明記されていること
⑥ 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印すること
■最後に「罰則」に関し、触れさせていただきます。
契約書を交付しなかったり、内容が不十分な契約書を交付したりした場合でも、直接的な罰則はありませんが、発注者・建設業者双方に重大な影響を及ぼす監督処分を受けるリスクがあります。
トラブル防止のためにも、契約書は必ず適切に作成・交付することが極めて重要かと存じます。
参考にしていただけますと幸いです。